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【アザミウマ(スリップス)駆除】生態や侵入経路から予防方法・駆除方法まで解説!

アザミウマは、植物に甚大な被害を与える害虫であり、特に農業に携わる方々にとって深刻な課題となっています。本記事では、アザミウマの生態、予防手段、そして効果的な駆除法について具体的に解説しています。アザミウマの問題に直面している方々にとって、本記事が一助となれば幸いです。

目次

・アザミウマ(スリップス)を駆除したい!
・アザミウマ(スリップス)の特徴は?
 └アザミウマ(スリップス)の生態
 └アザミウマ(スリップス)の発生源
・アザミウマ(スリップス)の被害
 └発生しやすい植物
 └自発生しやすい時期
・アザミウマ(スリップス)を駆除する方法
 └葉を処分する
 └粘着テープで捕獲する
 └天敵を活用する
 └木酢液を散布する
 └農薬で駆除する
・アザミウマ(スリップス)の発生を予防する方法
 └植物の間隔を空けて植える
 └防虫ネットを張る
 └アルミホイルを置く
 └植物の周りを手入れする
 └鳥殺虫剤など農薬を散布する
・害業者に依頼する場合
 └駆除費用の相場
 └自業者を選ぶ際のポイント
・まとめ

アザミウマ(スリップス)を駆除したい!

アザミウマを駆除するには、アザミウマの生態を理解することが重要です。生態の知識が不足すると、効率的な駆除ができません。まずは、アザミウマの生態について詳しく学んでいきましょう。

アザミウマ(スリップス)の特徴は?

アザミウマの特徴を深く知って、アザミウマの予防や駆除の手がかりを見つけましょう。下記から詳しく解説していきます。

アザミウマ(スリップス)の生態

アザミウマは、英名でスリップスと呼ばれる、1mmから2mmの細長い昆虫です。成虫の体色は黄色や褐色、黒など、種により異なります。日本全国で200種以上が確認されており、一部の種は5mほど飛行する能力があります。

気候としては20℃から25℃を好み、梅雨から初秋にかけての暖かな期間に急速に成長し、繁殖します。また、冬期でも園芸施設内では活動を続けます。

卵から孵化し、寿命を迎えるまでの周期はおおよそ15日から45日です。世代交代がはやいため、農薬などの駆除剤に対する耐性をつけやすく、対策も困難となります。

アザミウマは、植物の葉や花の内部に潜り、針状の口器で植物の汁を吸って栄養を得ます。多数が一斉に吸汁するため、植物に大きな被害をもたらします。植物の内部に侵入する習性のため、薬剤の効果が及びにくいという問題もあります。また、一部の種はウイルスを媒介する可能性があるため、対策は必須です。

その他の特徴として、アザミウマは青や黄色に引き寄せられ、逆に赤色を認識する能力がないことが挙げられます。

これらを踏まえた上で、アザミウマに対する駆除や予防策を適切に行うことが重要となります。

アザミウマ(スリップス)の発生源

アザミウマは、植物の葉や花を吸汁して生活しているため、植物そのものが発生源となります。特に庭や園芸施設などでは、アザミウマの発生に対して十分な警戒が必要です。彼らは様々な植物から吸汁する能力を持つため、雑草にも頻繁に出現します。また、新たに購入した植物の株や苗からもアザミウマが出てくることがあります。中でも葉の付け根は、アザミウマの繁殖に適した場所となります。

アザミウマ(スリップス)の被害

アザミウマは、植物に対してさまざまな被害をもたらします。以下から、詳しく解説していきます。

発生しやすい植物

アザミウマが発生しやすい植物と、その被害について解説します。

まず、ナスはアザミウマの被害を受けやすい一例です。アザミウマによる吸汁被害は葉や花弁に現れ、特に葉裏は白い斑点として表れます。被害が進行すると、この斑点は褐色に変わり、最終的には葉が落ちてしまいます。光合成ができなくなった植物は成長が停滞します。花弁が白く脱色し、果実はケロイド状に変形するため、収穫量の減少につながります。

ピーマンやシシトウもアザミウマによる被害が多い植物です。これらの植物では、アザミウマが主に花に寄生し、へたの周囲が黒く変色します。さらに、果実表面に奇形としての突起が現れるため、出荷量の減少を招きます。

トマトは、アザミウマの被害が特に顕著な植物です。アザミウマがトマトの花に産卵すると、産卵した部分の色抜けが見られます。さらに、アザミウマが媒介するウイルスにより「トマト黄化えそ病」が発生すると、葉にはえそが現れ、果実には着色不良や奇形が発生します。

スイカは、アザミウマの集団による被害に遭うと、葉と果実の接する部分や果実の端が加害される植物です。果実の被害は出にくい傾向があるものの、ひとたびアザミウマの侵入を許すと、栽培温度の高さが影響して冬場でもよく繁殖してしまいます。

これらの植物はアザミウマの被害を受けやすいため、特に注意が必要です。

発生しやすい時期

アザミウマが発生しやすいのは4月から10月です。アザミウマは20℃から25℃前後の温暖な気候を好むためです。好気温が上昇し、植物の成長も活発化する春から夏はアザミウマも増加します。とくに気温が高い夏は大繁殖する可能性があるため、注意が必要です。

冬場は低温により活動が抑制されますが、休眠はしません。園芸施設内など暖かい場所では、冬でも活動しています。

アザミウマ(スリップス)を駆除する方法

アザミウマを効果的に駆除する方法をこちらでは紹介します。簡単にできるものもあるため、積極的な駆除を行いましょう。

葉を処分する

アザミウマに侵された葉の処分は、有効な対策手段となります。アザミウマは非常に小さいため、一匹ずつ見つけるのは困難です。アザミウマに寄生された葉は、白や褐色の斑点が見られたり、形が変形していることが多いです。これらの葉はアザミウマの存在を示す兆候であるため、早めに取り除きましょう。

粘着テープで捕獲する

アザミウマは青や黄色に引き寄せられる習性を持っているため、青や黄色の粘着テープを仕掛けることで、効率的に捕まえられます。アザミウマが頻繁に移動する場所や、寄生している葉・茎の近く、株元などに設置しましょう。手軽で簡単に実施できるため、初めてアザミウマ対策をする人でも取り組みやすいです。

天敵を活用する

アザミウマの駆除方法のひとつとして、天敵を活用する方法があります。スワルスキーカブリダニやタイリクヒメハナカメムシは、アザミウマの天敵として知られています。これらの天敵にアザミウマを捕食させることで、駆除を試みる方法です。

しかし、新たな種を環境に加えると、予期しない別の被害や生態系への影響をもたらすリスクがあります。そのため、天敵を利用したアザミウマの駆除は、非常に困難だと言えるでしょう。

木酢液を散布する

木酢液を散布する手法は、アザミウマだけでなく、害虫全般に対して効果的です。

木酢液は、木材や竹を焼却した際に出る燻製のような香りを放つ液体で、害虫対策に頻繁に用いられるアイテムです。

木酢液は、アザミウマを寄せ付けない働きがあります。アザミウマの発生が多い場所や、侵入経路に木酢液を散布することで、アザミウマの侵入を防ぎ、被害を抑制することが可能です。

ただし、アザミウマを駆除する効果は直接的には高くありません。アザミウマが既に発生している場合、他の駆除方法との併用が必要となるでしょう。

農薬で駆除する

効率的にアザミウマを駆除したい場合は、農薬の使用を検討しましょう。以下に、アザミウマに高い効果を発揮するいくつかの農薬を紹介します。

オルトランDX粒剤:土に混ぜたり花や野菜の回りに散布したりすることで、アザミウマに対して強い殺虫効果を発揮する農薬です。植物が殺虫成分を吸収するため、葉についたアザミウマを効率的に駆除できます。植物の中に潜り込み、殺虫スプレーが直接かかりにくい傾向があるアザミウマに対しても効果的です。一回の散布で1か月ほど効果が持続するため、作業も効率化できます。

ベニカAスプレー:アザミウマに効果的な農薬です。アザミウマや植物自体に直接散布できるため手軽で、即効性と持続性に優れています。トマト、ナス、きゅうりなどに対しては収穫前日まで使えるのがメリットです。

スミチオン乳剤:アザミウマをはじめとする多くの害虫に対して効果を発揮する農薬です。スミチオン乳剤の大きなメリットは、高い安全性です。人や環境に優しいため、野菜などにも使いやすい農薬です。希釈したうえで、アザミウマが発生している植物に散布することで駆除します。原液を希釈して使用するため、使用できる量が多く、定期的な対策に最適な農薬です。

アザミウマの駆除に有効な農薬を紹介しました。しかし、アザミウマの種類によっては農薬に対して抵抗を持ちやすいため、ひとつの農薬を多用することは避けなければなりません。多くの自治体は、天然原料や接近防止など、農薬の使用だけではない多くの駆除方法を組み合わせることを推奨しています。アザミウマに耐性をつけないために、複数の農薬をローテーションするか、他の駆除方法を意識的に使うことを心がけましょう。

アザミウマ(スリップス)の発生を予防する方法

アザミウマの発生を予防するためには、以下の方法を行いましょう。

植物の間隔を空けて植える

アザミウマはさまざまな植物を食料とするため、連続して植物を植えると、アザミウマに絶えず食物を供給する形になってしまいます。そこで、一つの植物の栽培が終了した後は、なるべく時間を開けてから次の植物を植えることがおすすめです。栽培が終わった後は1ヶ月以上、新しい植物を植えない期間を設けると、有効な予防策となります。

防虫ネットを張る

防虫ネットを植物の周囲に設置すると、アザミウマの侵入を防止する役割を果たします。アザミウマの成虫は翅を持ち、約5mまで飛行する能力があります。したがって、園芸施設や農園の入り口に壁を設けたとしても、その壁を越えて侵入する可能性があります。しかし防虫ネットを使用すれば、直接植物を守ることができるため、アザミウマが植物に接触することを防げます。

防虫ネットを選ぶ際には、網目の細かいものを選ぶことが重要です。アザミウマは体長が1〜2mm程度と小さいため、網目が大きいネットでは、アザミウマが通り抜けてしまう可能性があります。そのため、網目のサイズが1mm以下のものを選ぶことが必要です。

また、防虫ネットの色については、赤色を選ぶと良いでしょう。アザミウマは赤色を認識することができないため、赤色のネットを使用することで、植物への侵入を防ぐ効果が高まります。

アルミホイルを置く

アザミウマは日光を浴びることで上下を確認する習性があるため、光の反射を嫌います。アルミホイルやアルミシートで株の周辺を覆って日光を反射させることで、アザミウマの方向感覚を混乱させることが可能です。アルミホイルは一般的な家庭に常備されているアイテムなので、コストや手間をかけずに取り組める対策としておすすめです。

植物の周りを手入れする

アザミウマの駆除には、植物の周りの整理整頓が非常に重要です。雑草や茂みはアザミウマにとって理想的な隠れ家となり、これらの存在はアザミウマの増殖を助長してしまうからです。

植物の栽培が終わった後、アザミウマが一時的に避難できるような雑草がないかを確認することも重要です。1か月以上植物を植えない間隔を確保したとしても、近くに食物源となる雑草が生い茂っていると、アザミウマはその食物を利用して生き延びることができてしまいます。したがって、収穫後の畑などでは、残った植物や周囲の雑草を取り除き、アザミウマが隠れたり食物を得る場所を排除することが重要です。

殺虫剤など農薬を散布する

殺虫剤には害虫の忌避効果もあるため、駆除する場合と同様に、土に混ぜたり、花や野菜、茎などに散布することで、アザミウマの接近を防止する効果が期待できます。アザミウマの活動時期は長いため、効果が長く続く農薬を選ぶと、アザミウマの発生を長く予防でき、作業効率がよくなります。

業者に依頼する場合

アザミウマによる大規模な被害や、頻繁な発生がある場合は、業者に依頼するのがおすすめです。業者は専門知識や経験をもっているため、効果的に駆除を行ってくれます。下記から、業者に依頼する場合の注意点を確認していきましょう。

駆除費用の相場

駆除費用は、作業箇所や範囲によって異なります。一般的には、駆除費用の相場は8,000円程度以上となることが多いですが、具体的な費用はケースバイケースであるため、参考程度に考えましょう。

正確な相場を知るためには、複数の業者から見積もりを取ることをおすすめします。費用を比較することで、駆除相場を把握できます。

業者を選ぶ際のポイント

アザミウマの駆除を業者に依頼する際は、次のポイントを考慮することが重要です。

・実績が豊富かどうか
アザミウマの駆除は専門的な知識と技術が必要です。そのため、業者の実績や経験を確認し、アザミウマ駆除における成功例がどれだけあるか調査しましょう。実績のある業者であれば、確実・効果的に駆除してくれる可能性が高いです。

・見積もりが詳細に記載されているか
見積もりには、駆除作業の内容や費用が詳細に記載されていることが望ましいです。はじめに低い基本料金を提示し、後から追加料金を請求する業者も存在しますので、すべての費用が含まれた見積もりを依頼することが重要です。

・保証があるかどうか
アザミウマのような小型の害虫は、一度の駆除で完全に取り除くことが難しい場合があります。そのため、駆除後に再度アザミウマが発生した場合や、新たな被害が生じた場合に備えて、業者が保証を提供しているかどうかを確認しましょう。

これらのポイントを念頭に置き、アザミウマの駆除業者を選ぶと、安心して任せることができるでしょう。

まとめ

アザミウマの被害を抑えるには、予防と駆除の両方を行うことが必要です。

植物の周りを手入れしたり、防虫ネットを張ったりして、接近させない対策を取りましょう。また、農薬は、予防にも駆除にも有効です。予防するための農薬は効果が長く続くものを選び、被害がある場合には即効性のある農薬を使用しましょう。また、アザミウマの駆除を業者に依頼する場合は、実績や詳細な見積書であること、保証内容が充実していることを確認しましょう。

定期的な管理と早めの対応が、アザミウマの被害を最小限に抑えることにつながります。予防や駆除を適切に実施し、ときには駆除業者に相談して、アザミウマ駆除に取り組んでください。

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